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胸になんか刺さった

クリエイティブディレクター西島知宏が、思考、企画、表現、言葉などについて書きます

「ドリームチーム」を夢みて、挫折した社長の話

去年の4月5日、この記事を書いた。

 

勘違いして4年で電通から独立したらエラい目にあった、俺死ね!

 

大変多くの方々に読んでいただいたようで、自分みたいなイケてない経験をした人間の話でも誰かの役に立ったり、参考になるもんなんだなと、大きな学びがあったし、独立してからの9年が少しだけ報われたような気がして、嬉しい経験でもあった。

 

そこで、これからも1年に一度。BASEの設立記念日である4月5日に、自分が犯した失敗と、そこから得た経験を備忘録的にまとめることにした。

 

1年に一度の連載なんてあんまり聞いたことないけど、毎年4月5日。ふと目にすることがあれば、軽い気持ちで読んでもらえればと思う。 

 

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10年前、2007年に会社を辞めた。

 

「辞めて良かったか」という質問をよくされる。そんな時は「もちろん良かったですよ」と答えてしまっている。「後悔してる」なんて言ったらかっこ悪いから。

 

もちろん金銭面や、自分のペースで仕事ができるようになったことを考えると「辞めて良かった」と言えるかもしれない。でも、聞かれた時は内心、汗だくになっている。本当は「辞めなきゃ良かった」と思うことの方が多かったから。

 

誰にも言ったことはないし、言ったらダサすぎるけど、辞めてから10年。おそらく15回くらいは「電通の中途採用ページ」を覗いたりもした。

 

辞めて初めて気づいたこと、それは「電通には自分よりできる人間が、空気のようにいた」ということだ。うまい空気もそうじゃない空気も、日常になれば気がつかない。が、もう一方に場所を移した瞬間、その存在に嫌でも気づいてしまう。

 

私は、たった4年しかいなかったが、失って初めて、今までいかに自分が恵まれた場所で仕事をさせてもらっていたかに気がついた。

 

「中小企業の社長は、自分より優秀な部下を集めろ」

 

なんて言う人がいる。しかし、自分より優秀な人間など簡単には見つからないし、見つかったとしても、相応の給料を払い、会社を維持し、毎年黒字を出していくことの大変さは並大抵のことではない。99%の会社はできないことだろう。

つまりは社会において

 

ドリームチームで戦えることなんて、ほぼない。

 

のだ。潤沢な資金をもった個人、ファンドから出資してもらって独立する、または、大きな実績を共有した仲間と独立するという形ならドリームチームもありえるかもしれない。

 

しかし、たいていの中小企業は

 

目の前のチームで戦い、勝たないといけない。

 

のだ。その覚悟が、2007年の私にはなかった。いや、そんな覚悟の必要性にすら気づいていなかったというのが正しいのかもしれない。辞めて2、3年は、スタッフに電通時代の同僚のレベルを求めていたし、うまくいかなくて衝突して、突然いなくなってしまったスタッフもいた。本当に申し訳ないことをしたと思っている。

 

そんなことをある年の正月、奈良の実家の母親に話していた時、何気なく言った母親の一言が、私の胸を貫いた。

 

「社長の器が、会社の器。」

 

こんなに的を得た言葉があるだろうか。母ちゃんすごい! 天才!

 

と感動する余裕はなかった。とにかく、ひどく落ち込んだ。

 

しかし、この正月をきっかけに、仕事に対する考え方が変わった。会社や仕事で起こるすべての「悪いこと」は自分がイケてないからだと思えるようになったし、目の前のメンバーは「自分という器」を信じてついてきてくれている、かけがえのない存在であることに、ようやく気がついた。遅いわ!

 

ドリームチームだけが、最強の形じゃない。

 

今は、そう思う。

 

もちろん誰だって、ベストがいいに決まっている。自分が望んだ仕事を、自分が望んだメンバーで、自分が思い描いた通りに形にする。それが一番いいに決まっている。でも、なかなかうまくいかないのが人生だし、だからこそ、仕事は、生きることは、楽しいのだと思う。

 

今日で丸10年、2週間後には40になる。

 

先日は、もの凄く当たると言われている占い師に「健康に気をつけろ」と言われた。「どこをどう気をつければ?」と聞き返そうとした所で、60分3万円の占いは幕を閉じた。

 

でも、まぁとりあえず今はピンピンしている。昨年の人間ドックも、A寄りのB判定だった。尿酸値も下がっているし、週一回休肝日も作っている。まだまだやれるだろう。

 

「この器」についてきてくれるスタッフとともに、「素晴らしいベター」を生み続けられるように、この一年頑張っていこうと思う。

 

そして

 

「どちらかと言えばベターな人生だったな」

 

そう思える時が来たら、また、60分3万円の占い師に、その後の人生について相談しに行こうと思う。

 

株式会社BASEは今日、11年目を迎えました。

 

【こんなのも書きました】

▶ 勘違いして4年で電通から独立したらエラい目にあった、俺死ね!

▶ 13年前、電通に入社した頃の自分に伝えたい10のこと

 

思いつかない人のコンテンツ思考塾」やってます

著書『思考のスイッチ ~人生を切り替える11の公式~』もよろしくお願いします

 

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